空行く月のバードハウス このバードハウスのコンセプトは、以下の諸機能の成就を目指すものです。即ちそれは避難所であり、巣であり、給餌台であり、交わり合う場所でなければなりません。それはまた、巣の安全のために、巣を隠し、偽装すると云う必要に応えるものでなければなりません。 それは住まいを分かち合いながら共同して生きるいろいろな種類の小鳥たちのための設計です。鳥たちはそれぞれ独自の生き方、独自の適した場所があります。他の種類の鳥や、食べ物や、大敵に対して独自の関係を持っています。彼らは同じ住まいを異なるルールに従って異なる時に使うことが出来るのです。それで巣の設計が、鳥たち自身が択び運んでくる素材を一体化することになります。 このバードハウスはごくありふれた自然の素材を結びつけた設計です。それは木材の持つ大地の暖かさと金属の持つ冷たさを混ぜ合わせ、対比させます。前者は柳、後者はアルミニウムです。 水も不可欠の要素です。汚染や蒸発を避けて貯水は空洞の中で行います。食料は穴に運んで集積します。自然に生える草木が巣と一体化して、避難所と偽装の働きもします。 このバードハウスはいったいどのようなものかと云いますと、砂漠の地面に風に揺れるイバラの茂みをイメージして頂くとよいでしょう。始めのうちはデコボコがありますが最後にはほとんど完全な球形になります。 このバードハウスは、核となるアルミ球と、その回りの入り組んだ木の枝で構成しています。それは巣と水がめと食べ物があり、そして草木の生える一つのシステムです。 時には枝の大きさや形状によって隠れ家となる空洞が出来たりして水が流れる水路の働きをすることがあります。枝の表面に溝が出来て、そこに種子が集まり、水が流れて、草木が生えます。 アルミ球の表面も種子と水を集める漏斗状の小さなくぼみが一面にあって、貯蔵庫であると同時に餌場になっています。 枝がからみ合って描き出す軌道は交流のための空間を生み出します。枝自体は水が流れることで草木自生の源になります。 枝のからみで隠れ家が出来、食料や水を集める洞穴が作られます。小枝は鳥たちがつけ加える他の素材といったいとなって共同体の巣が出来上がります。 モデル作品には柳の枝を使っていますが、それは曲がって入り組み、水に触れると芽が出るからです。 モデル作品の材料は実物の製作に使うものと同じです。直径120センチメートルの球体と云うサイズも実物の一番小さい場合のサイズと一致するでしょう。 くすんだ不規則な枝の軌道のつくる空間の中心に、燐然と輝く球体があり、枝はその表面に影をつくり、それを隠します。 実現したバードハウスは、周囲の環境と一体化し、そこへ溶け込む必要があります。(土や砂の上の木材のように)色を重ねるには巣を外的から守り、卵や雛の安全、食料や水の保存を図るために必要なのです。 バードハウス全体の大きさは、枝のからみ合い次第ですからかなり巾があります。 求められる最終的な効果は入り組む枝と不規則や偶然性の結果としてうまれるある種の規則性の稔りなのです。風にゆれて、光と影があやしくたわむれ合う中でイバラがもつれ合っているノと云うのがこの作品のコンセプトをもっとよく表すイメージです。無秩序と偶然から生じるある種の均衡、と云ってもよいでしょう。 偶然の成り行きと云うアイディアは鳥の飛び方の中にもあります。もっともそれは外見上だけのことでしょうが。 |