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ルーク・スティールズ

クリス・ラングトン

ルーク・スティールズ

ブリュッセル大学(VUB)で人工知能の教鞭を取るかたわら、ソニーコンピューターサイエンス研究所(パリ)でディレクターを務める。ロボット工学および人工生命の研究に20年近くも携わり、これら分野の論文および著書が多数ある。最近は、コミュニケーション・システムの起源を調べるためのロボット・シミュレーション作りに的を絞った研究を行い、この研究を広く知ってもらうための装置も創り出し、パリ近代美術館などの主要な美術館で展示している。

シルバノ・コロンバーノ

 このバードハウスのデザインには、様々なものがひとつになって溶け込んでいます。
 まず初めに、私が興味を持ったのは、鳥は実際にどのように巣を作るのか、ということです。どうやって高い所から落ちないような構造に仕上げるのか。バードハウスの大きさと形は、何によって決めるのか。どうやって巣作りを開始するのか。そこで、バードハウスに関する文献(特にHansellの著作、2000年)を調べたところ、特に、ハタオリドリとボルチモアムクドリモドキにピンとくるものを感じました。鳥は、慎重に材料を選び、単純な巣作りのルールを守りつつ、一連の定型化された動きを繰り返すことがわかっています。複雑な巣は、こうした単純な法則から生まれる。これこそが、私に大きな関心を抱かせ、数多くの人を人工生命の研究へとかりたてたテーマです。バードハウス作りをするにあたっては、このような法則の一部を拝借しました。また、らせん状のコイルや織り布、より線(alternately rever-sed winding)など、鳥が使う材料を用いました。
 次に、ゴミを新しい目的のために再利用するというアイデアから、研究所で残った材料を使いたいと考えました。アムステルダムの運河で、鳥が、路上のプラスチックやワイヤーを運んできて、巣作りに使うのを目にしたのです。私の研究所には、ワイヤーなど、ロボットを組み立てるのに使う材料がたくさんあります。従って、私のバードハウスの材料は、すべてここから調達しました。研究所を一周して(鳥が材料を探すように)、ワイヤーを少し集め、鳥がやるように、徐々に巣作りを進めていったのです。また、子供の視点から見た巣と、巣が形作られていく様子を知りたかったので、8歳のエズラ・ベルグラド(Ezra Belgrad)君に助けてもらいました。
 3番目に、私は巣の中の音を使いたいと思いました。それは、鳥が自然に出す音でなくてはなりません。そこで、鳥のさえずりについて調べたところ、とても面白い研究結果(ニューヨークのNotte-bohmとそのグループによる研究結果など)を発見し、さえずりが季節毎にどのように変わるか、そして、新しいさえずりを考案したり、学んだりするために、鳥の脳が大きくなったり、小さくなったりする仕組みを知りました。この研究は、私自身の、言語音の起源に関する研究とも深く関係しています。このふたつを結び付けるために、鳥のさえずりのCD-ROMを探し、フランス(パリ)のガーデンで収録された鳥のさえずりを聞くことができる、最適なCDを見付けました。しかも、このCDは、フランス語でさえずりの意味を説明しています。
 最後に、インターネットを通じて、他の鳥の巣とリンクさせたいと考えました。巣の底部に小さなスクリーンを取り付ければよいのです。その際には、鳥の巣に適応させたWWWカムからの映像を使うことをお勧めします。実際のところ、これは世界中にたくさんあるのです!鳥の巣に関するウェブサイトが現在いくつ存在するか、その数を聞いたら、きっとびっくりすることでしょう。こうした映像から、1つの鳥の巣を、世界各地の鳥の巣に結び付け、自然をワールドワイドな現象として見せるのです。子供たちがインターネットを検索して見付けたすばらしい鳥の巣の映像が、私の鳥の巣にあるスクリーンに映し出される。こんなことも可能になるはずです。

参考資料:Hansell, M.(2000年)、Bird nests and Construction Behaviours、Cambridge University Press, Cambridge, UK.

松原 仁

レベッカ・フランダース

スコット・ハウ