北九州博覧祭

学生たちの発想は、きわめて興味深い。専門家の出す鋭い技術的視点を持った作品と比べると、若者たちの作品には、やや観念的でありながらもユニークな思考がうかがえて面白かった。
審査にあたっては、「地球は巣箱だ。」というバードハウスプロジェクトの基本コンセプトをいかに表現できているか、また、地球の環境問題に対する独自の視点とその解決法が提示できているか、さらに、造形表現としていかにすぐれているか、の三点を考慮した。

若い人たちが、巣箱というテーマに様々な思いを託して、知恵と技を競ったことを清々しく感じた。僕はアジアからの作品に魅力を感じた。例えば金賞の「Take under our wings」には埴輪のようなアルカイックな雰囲気があり、愛らしい表現になっている。抽象化する現代社会を、自然に振り返らせる強さを持っている。日本の作品は総じて、どこかひねってやろうという魂胆が見え、結果としてストレートさを欠き、主張が曖昧になっているものが多かったように思えた。アジアの若者たちの造形と社会に対する率直さの前では、か弱い印象をうけた。

「未来の地球環境のオリジナルヴィジョン」が、作品の中にいかに的確に表現されているか、すなわち地球の生態系のもつ多様性を、いかにシンプルな構造体で表現しきれているかを審査の基準とした。銀賞の「はげ森再生計画」は植物と動物の共生を一つ構造体に込めたところが秀逸であり、協会特別賞の「無題」はビルの谷間という無機的な場所に、無機的な素材を配して、それを手がかりに有機的な存在(生物または鳥)が生命を宿す場を作っていくというイメージに共感を持った。また審査員特別賞の「Bamboo」は、地下茎でつながる竹を用い、その分節に穴を穿つだけで均質性と多様性の共存を表現して、目をひいた。

馬 春東 Ma Chun Dong
大連民族学院教授
Professor of Dalian University for National Minorities
バードハウスの制作にあたっては、造形の美しさとシステムの斬新さを重要視した。鳥たちに起こっている問題は、人間をとりまく環境問題と無関係ではない。住環境の悪化により都会に棲息しなくなった鳥たちの呼び戻しと、干ばつ地域における鳥たちの飲料水問題が今回参加した作品のテーマだが、いずれも私たち人間にそのままそっくり当てはまる問題である。システムの面では、工科の学生たちの協力を得て完成した。

陳 國祥 Kuohsiang Chen
国立雲林科技大学教授
Professor of National Yunlin University
バードハウスの制作にあたっては、造形の美しさとシステムの斬新さを重要視した。鳥たちに起こっている問題は、人間をとりまく環境問題と無関係ではない。住環境の悪化により都会に棲息しなくなった鳥たちの呼び戻しと、干ばつ地域における鳥たちの飲料水問題が今回参加した作品のテーマだが、いずれも私たち人間にそのままそっくり当てはまる問題である。システムの面では、工科の学生たちの協力を得て完成した。

白 金男 Baik Kum-Nam
成均館大学校教授
Profeccer of Sung Kyun Kwan University
今回、国際的な広がりを持つバードハウスプロジェクトに参加できて、大変うれしく思う。また、もっと早くこのプロジェクトと知り合っていたらよかったという思いで一杯だ。このバードハウスプロジェクトのおかげで、21世紀を迎えた人間にとって最も重要な環境問題、特に人間と環境との関係について、私たちも深く考える機会が持つことができ、大変意義深かった。各地を回りながらこのバードハウスプロジェクトを支えている皆さんに、拍手を送りたい。

郭 培建 Guo Pei Jiang
中国美術学院 外事弁公室主任
Director of foreign affair office /China Academy of Art
バードハウスプロジェクトのコンセプトである、私たちが住むこの地球の環境を守ることは、全世界の人々が持つ共通の目的でもあります。私たちは、昔も今も、環境を守ってきましたし、今後も守っていくでしょう。環境の保護は、目標であると同時に、私たちの生活の大切な部分でもあるのです。このバードハウス展のような、私たちが暮す地球の環境保護を目的とした活動がもっと増えることを、心から願っています。

Han Suk-Woo 
ソウル国立産業大学校教授
Professor of Seoul National University of Technology
今回のプロジェクトでは、新たな造形感覚を磨く機会を得ることができたと同時に、学生たちがワーキンググループをつくって共同で作業するという経験を持てたという点で、非常に有益だった。このような機会を与えて下さったことに感謝する。学生たちがこのプロジェクトを通じて国際的なコミュニケーションを持ち、お互いに視野を広げ、いつの日か鳥のように自由に行き来できるようになることを期待する。

邵 健偉 Michel Siu
香港理工大学助教授 
Assistant Professor of The Hong Kong Polytechnic University
このコンペの目的は、自然と調和した暮しです。一人の人間あるいは複数の人間だけはなく、みんなへの配慮が加えられていなければ、よく設計された住居とは言えません。また、外観やハイテクの新技術だけでなく、設計に込められた意味にも強い関心を払う必要があります。これを少数のデザイナーや学生が参加するコンペのテーマに終らせず、今そして未来を生きるすべての人の生涯に渡るヴィジョンとミッションにすべきだと思います。